第8章 追憶 (9回目)

20/24
前へ
/229ページ
次へ
「そうだよ。和也が探してくれていた、四つ葉のクローバー。なかなか見つからなかったでしょ。あれから毎日、和也が探してたの知ってたんだ。鼻に傷まで作って。でも、だんだんと申し訳なくなっちゃって、私も別の場所で、学校帰りに探してたの。私が見つければ、和也が探すのを諦めるかなって思ったから。私のために必死になって探してくれてることだけで、十分だったから。だから私が見つけたクローバーを、和也に渡したかった」  ――あの日、サラが渡したいと言っていたのは、四つ葉のクローバーだったんだ。  「四つ葉のクローバーの花言葉ってね、『幸運、約束、私のものになって 』だと、本で知ったの。引っ越しても、和也に約束のことを、忘れて欲しくなかったから」   俺の意気地のなさが、想像以上に、サラを悲しませていたことを、ようやく知った。  「本当に、ごめん。俺が隠れなければ⋯⋯」 「でも、こうして時を越えて、私に会いに来てくれたから、もう許してあげる」   自分自身を長い間縛り付けていた、後悔という檻から、ようやく解放できるときが訪れたのかもしれない。
/229ページ

最初のコメントを投稿しよう!

111人が本棚に入れています
本棚に追加