第8章 追憶 (9回目)

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「タイムスリップのルールは『過去の自分』に会わなければいいんだよね」 「サラ。何をしようと思ってる」 「10歳の和也くんと話してくるの」 「⋯⋯何を」 「私たちが、ようやく今になって知ることができた、10歳の彼が知らない事実をすべて。ここに来たのは、過去を変えるためだよね。私たちの未来のために。もう二度と、後悔はしたくないの」   サラは、この話を聞いたときからすでに、覚悟を決めていたんだ。  強い眼差しで真っ直ぐこちらを見る、この表情をしたサラを止められないことは、よく分かっている。  せっかく二人で来たのに、サラばかりに任せてもいられない。それにこれは、俺が始めたことだから。 「俺が先に行くよ。あそこのサラと話してくる」  そうサラに伝えて、歩き始めたまではいいが、いざ、10歳のサラと話をするとなると、妙に緊張してくる。  あの日会えなかったサラが、すぐ目の前にいるんだから。  まず、何て話し掛けようか――。
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