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そのとき、前を横切った10歳の俺が、コソコソとポストに隠れる。
「ほら、お前、しっかりしろよ!」と、その背中に怒鳴ってやりたい気持ちを、グッと我慢して飲み込む。頼りない後ろ姿だなぁ。
隣にいたサラが、何の迷いもなく、10歳の俺に向かって、小走りで向かっていった。
「ねぇ、君。佐藤和也くんだよね」
ポカンとしている10歳の俺と、サラのやり取りは、それ以上は聞こえなかった。
冷静に考えたら、不思議な光景だ。
10歳の俺の肩に、22歳のサラが手を掛けて、「頑張れ!」と言っているのを、32歳の俺が見てるだなんて――。
戻ってきたサラがケラケラと笑っている。
何がそんなにおかしいのだろう。
「和也くんは、やっぱり和也だった」
「そりゃそうだ。俺だもん。それに10歳の俺、めちゃめちゃ励まされてるじゃん」
「昔はいつもこうして励まされてたでしょ」
「なんだよ、俺ってそんなに頼りなかった」
この感じ、まるであの頃みたいだった。
サラは小学生の頃ような表情をしていた。
なんだか不思議で、嬉しくて。
胸の中に、ポッと温かなあかりが灯る。
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