第8章 追憶 (9回目)

24/24
前へ
/229ページ
次へ
 サラと話をしている間に、ポストに隠れていた10歳の俺が、クローバーを持つ10歳のサラに、話し掛けに行っていた。 ――少女が、少年にクローバーを差し出す。   よっしゃ~。  サラと手を取り合って喜んだ。  そうだ。  サラからクローバーを渡されたんだ。  新たな記憶が、突然の雨のように湧き出す。  俺の過去も変わったのか――。   隣にいるサラは、瞳を潤ませ、10歳の俺とサラの姿を、できるだけ目に焼き付けようと、じっとその様子を見つめていた。  「⋯⋯そうだ。あれから、もう一度約束したよね。私たちが最後にした約束。和也、覚えてるかな」  この場面のシナリオも書き換えられた。  その約束の言葉を思い出して、目の前に存在する22歳のサラに、もう一度、思いを込めて伝える――。  「いつか迎えに行くから、そのときに結婚しよう。サラ」 
/229ページ

最初のコメントを投稿しよう!

111人が本棚に入れています
本棚に追加