第2章 遺影

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第2章 遺影

*** 《 2020年7月15日 》  俺は、岸本 和也(きしもとかずや)。  いわゆる、「アイドル」の仕事をしている。  22歳でデビューをして、今年で32。  遅咲きだと、よく言われる。  だから、事務所内では、中堅どころの立ち位置にいる。  昔のアイドルは、若い頃にデビューをして、その命は長くても20代前半まで。  だから、22でデビューを決めるまでの俺にかかる、年齢的なカウントダウンのプレッシャーは、かなりのものだった。  辞めようと思ったことは、自慢じゃないが、事務所内の誰よりも多いと思う。  今の社長に、14歳の時にスカウトされたのをきっかけに、事務所に入った。  そこから、果てしなく長い下積み時代を過ごしてきたのは伊達じゃない。踏まれても簡単にへこたれない、心の強さを身につけたのは、間違いなく下積み時代のお陰でもある。  だが今の時代、アイドルの高齢化が進み、30代台のメンバーがいるグループも、決して珍しい話ではなくなった。  デビュー10周年を迎える、俺らのグループのファンも、徐々に人数が増え、そのお陰で人気は右肩上がり。  メンバーそれぞれのレギュラードラマや、バライティーの仕事も、コンスタントにもらえるようになってきていている。  俺は、7人組の、「Rainbow Star」というグループに所属している。通称「レイスタ」。  下積み時代を共に戦ってきたメンバーとの絆は、同志のように固く結ばれている。
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