第9章 別離

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 途切れたサラの声は、薄闇と共に姿を消し、強く掴んでいたはずの手が虚しく空を切っただけで、もうそこに誰もいなかった。  あぁ――。  声にならない声が漏れる。  強く彼女を掴んでいた拳を握った。  まだ残る手の温もりだけが、サラがそこにいたことを証明していた。   堪えきれない寂しさに襲われ、階段を登り切った扉の前で座り込むと、一歩も動けなくなってしまった。  身体の芯の部分の力が抜けて、魂が影のように消えてしまいそうだった。  抗えないものだと分かっていたけれど、一縷の希望すらも絶たれてしまった現実に、恐怖を覚えて、小さく震えていた。  未来って奴は、希望に溢れていて、期待に胸躍らせるもんじゃないのかよ――。  この先に広がっている未来には、濃い闇だけが続いているだけのように思えた。  一人になって、さらに、この扉の先にある世界が、物凄く恐ろしく感じる。  元々の世界とは全く違う景色が、存在するかもしれないのだから。  だが、たとえ、そこに廃墟のような街が広がっていたとしても、俺には選択肢なんてものは初めからない。  後ろを振り向いてみても、やっぱり暗い海のような闇が、ただそこにあるだけだった。 ――進むか。  その有り様が一変した世界を見届ける責任が、きっと俺にはあるのだろう――。 
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