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「22年前から戻ってきました。マスター、さっき⋯⋯いや、22年前に『願いは叶ったんじゃないですか』って、僕におっしゃった言葉、まだ覚えていますか」
「ええと⋯⋯」
古い記憶を呼び起こすように、視線を上へ向け、しばらく考えていたマスターの表情が、何かを思い出したように柔らかくなる。
「あぁ、確か。あの女性を、お連れになられていたときですね。そうですか、今日はあそこから、お戻りになられましたか」
「はい。そうなんです」
「では、あの方はどちらへ。お姿が見えないようですが」
「彼女は、元の時代へ戻りました。過去へ戻る最初の目的の、会いたい人に会うこともできましたし、後悔していたこともやり直せたので、もうこれで時間旅行を終わりにしたいと思っています」
「では、これから、この時代のあの方のところへ、行かれるおつもりですか」
「その事なんですが、22年前に『9回分の意味はありましたね。願いは叶ったのではないですか?』っておっしゃていたのは、彼女の未来がどう変化したかを、マスターはすでにあの時点で、ご存知だったからなんでしょうか。それなら、この先のことも全て、どんな結果が待っているのかも、ご存知だってことですよね」
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