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「いいえ。私はただの管理者ですから。あのときは、岸本さんのお顔を拝見して、思ったことを言わせていただいたまでです。しかし本来、時間というものは、常に変化していくものでもありますし、それと共に、人の心も変わっていきます。今、この瞬間に願っていたことが、次の瞬間も全く同じ願いであるかと言ったら、そうじゃないことだってあるはずですから。でも私は、それでいいと思っています。過去とか未来などに振り回されず、今のご自身の気持ちを大切に、前へ進んでいく、ただそれだけでいいのではないかと。岸本さんの今の願いは、ご自身が一番よく分かっておられるのではないでしょうか。ですから、確かな心の目で、まずはしっかりと今をお確かめになった方がよろしいかと」
マスターは優しく微笑むと、カウンターの裏へ姿を消した。
俺の望み。
心の目で見えるもの。
目で見えている余計なものに揺さぶられず、自分を信じることで見えてくるものか。
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