第10章 未来

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 まず、店を出ると、すぐにポケットからスマートフォンを取り出し、記録されている電話帳で、サラの名前を探してみる。  この時代のサラの電話番号は知らない。  10年前の番号は登録されているはずだけど、それが残っているのかも定かではない。  ゆっくりと画面をスライドしながら、上から順番に、目で辿って行く。  頼む! 残っていてくれ――。   あっ、あった! 「瀬戸山サラ」間違いなくサラの名前だ。  いや、でも、電話番号が残っていただけでは、サラが存在するかは、まだ分からない。  どうかサラが、この世界に存在していますように。少し冷たく強ばる指先で、発信ボタンを押した。   ⋯⋯。⋯⋯。⋯⋯。   出てくれ、出てくれ――。  コール音よりも大きいボリュームで、鼓動が全身に響き渡る。しかし電話の向こうはコールが鳴り続けるだけだった。  出ないか――。  コールが鳴っているなら可能性はある。  それが分かっただけで少し胸が楽になる。  だが、次の問題もある。  俺には他に打つ手がなかった。  サラを探す場所の見当が全くない。 
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