第10章 未来

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 サラの居場所か――。  よく考えると、あんなに愛していたはずの22歳のサラについて、知らないことばかりだったと気付かされる。  いや、むしろ、ほとんど知らなかったのかもしれない。この時代のサラも、10年前のサラも、小学校4年生のときでさえも。   とりあえず10年前のマンションへ行ってみるほかないか。  道路に向かって手を高く上げ、ちょうどそこに来たタクシーに乗り込む。  運転手にマンションの住所を告げると、後部座席に深く身体を沈め、ひとまず気持ちを落ち着かせることにした。  車のスピードに合わせて走る景色は、俺が元々いたここら辺のものと、何も変わらないようにも見える。 ――何か、変化したのだろうか。  未来は全く変わっていない可能性だって大いにある。それに、この時代のサラが、あのマンションに住んでいるとも限らない。  だから過度な期待なんてしない方がいい。  これ以上、絶望を味わうのは、もうさすがにキツい。望みの薄い希望なんて持たない方がいいって、嫌という程に知ったからな。  タクシーのガラス窓の外に、ようやく、見覚えのあるマンションが見えてくる。  ここだ。変わってない。  10年前のマンションの建物や、周りの様子は、ほぼ記憶のままだった。  昨日の朝、サラと温泉に行くために、この場所に車を止めて待っていたのが、かなり遠い昔の記憶のように感じられる。  実際に、10年前のことだったように。 
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