第2章 遺影

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「もしもし。母さん。 電話、掛けてくるなんて、ずいぶん珍しいじゃない」 「和也。今、話してても大丈夫?」 「あぁ。少しなら平気だけど」 「あのね。今週の土曜日、和也のところに、泊まらせてもらえないかと思って」 「何かあったの?」 「実は、お友達のお子さんが、急に亡くなったのよ。だから、お線香をあげに行きたいと思ってね。ご葬儀は日曜の朝だし、葬儀場が品川駅の近くだっていうから、それならあなたのところから行った方が都合がいいでしょ」 「そうなんだ。まぁ、別にいいけど」 「でも、急過ぎるわよね。まだ若いのに。可愛い子だったのよ、娘さん。あぁ、そうよ、和也も知ってる子じゃない。郵便局の隣に住んでた、サラちゃん。ほら、4年生の終わりに、引っ越したでしょ。同じ学年で、クラスも一緒になったことあったわよね。いつも物静かだったけど、賢くて、可愛らしい子だったのにねぇ。最後に会ったのはいつだったかしら。たしか、お寺のお祭りの───」 
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