第1章 誕生日 (1回目)

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 会社に勤め始めて、2年目。  いつも通りの、深夜の帰り道。  たいした変化のない日々。  短大を卒業して、この「天星出版(てんせいしゅっぱん)」に、入社したばかりの頃は、目を輝かせ、夢を実現させようという意欲に満ち溢れていた。  でも、ここのところ、自分の信念さえも信じられなくなって、自己嫌悪に沈んだ気持ちが慢性化していた。  この2年間で、やれる仕事の種類は増えたけれど、まだまだ半人前な私に、日々与えられる、山のように積まれた「名前すらない」雑務に追われて、残業なんて当たり前。 「働き方改革」や「リモートワーク」なんてどこへやら。ただ私の要領が悪いのか。この仕事の効率が悪いのか。それともそのどちらもか。  静まり返ったオフィスのフロアーで一人、煌々と光りを放つパソコンの画面に向き合っていることも、もはや日常的な光景。  踏ん張りが効く今だからこそ、無理をしてでも、できるだけ多くのことを得ておきたいと思う反面、この状態が半永久的に続くかのように思えて、さらに気分は沈んだ。  だからって仕事に穴は開けられないし、中途半端で会社を辞める訳にもいかない。  わずかに残るプライドが、かろうじてここから逃げ出そうとする気持ちを、ギリギリで足止めしていた。  そうやって毎日プレッシャーをかけながら、なんとかここまで前へ進んできたんだ。
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