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乗り気ではないサラと空き地に向かう。
俺は、二人一緒に探せば、すぐに見つかるだろうという、安易な考えを持っていた。
そう簡単に見つからないことを思い知ったのは、真っ青な色だった空が、オレンジ色と混ざり始め、春の生暖かい風が冷たくなってきた頃だった。
それでも決して探す手を止めなかった。
この手を止めたら、サラとの別れを認めてしまうことになると思ったからだ。
――もう帰ろうよ、和也くん。
辺りがすっかり闇に包まれた頃、サラが悲しそうに呟く。
それはまるで、俺たちがどんなにあがいても、叶わない願いがあるんだと言うような、諦めの目をしていた。
サラのために何もしてやれないのか。
自分の無力さに、唇を強く噛む。
*
その日から毎日、学校帰りに、クローバーを一人で探し続けた。
期待を持たせておいて、裏切るような悲しい思いをさせたくなかったから、あえてサラを誘うことはしなかった。
手足を泥だらけにしながら、連日暗くなるまで、空き地をくまなく探し続けた――。
*
いつものようにクローバーは見つからず、肩を落として家に帰ったある日。
俺の顔を見た母さんが、大声を上げた。
――和也どうしたの、その顔!
――えっ、顔って?
自分の顔に手を当ててみる。
指がヌルッとした赤い色に染った。
鼻筋の上が大きく切れて血が出ていた。
雨に濡れた空き地で、足を取られて転んだのは覚えていたけれど、探すことに夢中になっていて、出血していることに気付かなかった。
そんな傷よりも、クローバーが見つからない心の傷の方が、ヒリヒリと痛んだ。
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