第2章 遺影

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 乗り気ではないサラと空き地に向かう。  俺は、二人一緒に探せば、すぐに見つかるだろうという、安易な考えを持っていた。  そう簡単に見つからないことを思い知ったのは、真っ青な色だった空が、オレンジ色と混ざり始め、春の生暖かい風が冷たくなってきた頃だった。  それでも決して探す手を止めなかった。  この手を止めたら、サラとの別れを認めてしまうことになると思ったからだ。  ――もう帰ろうよ、和也くん。  辺りがすっかり闇に包まれた頃、サラが悲しそうに呟く。  それはまるで、俺たちがどんなにあがいても、叶わない願いがあるんだと言うような、諦めの目をしていた。  サラのために何もしてやれないのか。  自分の無力さに、唇を強く噛む。  *  その日から毎日、学校帰りに、クローバーを一人で探し続けた。  期待を持たせておいて、裏切るような悲しい思いをさせたくなかったから、あえてサラを誘うことはしなかった。  手足を泥だらけにしながら、連日暗くなるまで、空き地をくまなく探し続けた――。 *  いつものようにクローバーは見つからず、肩を落として家に帰ったある日。  俺の顔を見た母さんが、大声を上げた。 ――和也どうしたの、その顔! ――えっ、顔って?  自分の顔に手を当ててみる。  指がヌルッとした赤い色に染った。  鼻筋の上が大きく切れて血が出ていた。  雨に濡れた空き地で、足を取られて転んだのは覚えていたけれど、探すことに夢中になっていて、出血していることに気付かなかった。  そんな傷よりも、クローバーが見つからない心の傷の方が、ヒリヒリと痛んだ。 
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