111人が本棚に入れています
本棚に追加
/229ページ
他のメンバーよりもヘアメイクが早く終わったので、気だるい身体を少しでも休めようと、ソファーに横になって目を瞑る。
だが神経が立っているのか眠れそうにない。
そんな自分に余計にイラついて、大きなため息と共に起き上がった。
「ねえ、和也~。最近、頑張り過ぎてないか。誠も心配してたよ。顔色良くないって」
すぐそばに座っていた三島が、柔らかい声を掛けてくる。
いつもメンバーを気に掛けている三島。
みんなの些細な変化に気が付いて、「なんかあった~?」と相手を身構えさせることなく懐にスルッと入ってくる。
そんな所にいつもながら感心する。
「サンキュ。ちょっと忙しくてさ」
「そうだよね~。もうすぐ舞台の本番でしょ。ドラマの撮影終わってすぐに舞台で、その後に映画の撮影が待ってるなんてハードスケジュール過ぎだよ」
「まぁ、今が正念場だから」
「みんなあんまり口に出さないけど、和也のこと心配してるよ。無理だけはすんなよ」
「あぁ。分かってる」
「そうだ。仕事が落ち着いたら、肉でも食いに行こうぜ!」
ふふっ。マジで有難い。
目頭に込み上げるものを感じたけれど、気をそらしてなんとか堪えた。
「じゃあ、三島のおごりな」
「おう。いくらでも任せとけぇ~」
自分の胸をパーで叩いておどけて見せる、三島のその笑顔に、胸が熱くなる。
そうか。
周りにも無理していると映っているのか。
心配をされるほど。
いくら後悔して落ち込もうと、苦しもうと、サラの現実は何も変わらないのだから。
またあの笑顔が脳裏に浮かぶ。
白い花の中で微笑むサラ――。
感情を抑え込むように腕を組んで、天井を仰いだ。
ワインの瓶の底に沈む、澱みたいな心の奥底に沈殿したものを、全て吐き出してしまうように、もう一度ため息を吐いた。
最初のコメントを投稿しよう!