第2章 遺影

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 他のメンバーよりもヘアメイクが早く終わったので、気だるい身体を少しでも休めようと、ソファーに横になって目を瞑る。  だが神経が立っているのか眠れそうにない。  そんな自分に余計にイラついて、大きなため息と共に起き上がった。 「ねえ、和也~。最近、頑張り過ぎてないか。誠も心配してたよ。顔色良くないって」   すぐそばに座っていた三島が、柔らかい声を掛けてくる。  いつもメンバーを気に掛けている三島。  みんなの些細な変化に気が付いて、「なんかあった~?」と相手を身構えさせることなく懐にスルッと入ってくる。  そんな所にいつもながら感心する。 「サンキュ。ちょっと忙しくてさ」 「そうだよね~。もうすぐ舞台の本番でしょ。ドラマの撮影終わってすぐに舞台で、その後に映画の撮影が待ってるなんてハードスケジュール過ぎだよ」 「まぁ、今が正念場だから」 「みんなあんまり口に出さないけど、和也のこと心配してるよ。無理だけはすんなよ」 「あぁ。分かってる」 「そうだ。仕事が落ち着いたら、肉でも食いに行こうぜ!」   ふふっ。マジで有難い。  目頭に込み上げるものを感じたけれど、気をそらしてなんとか堪えた。  「じゃあ、三島のおごりな」 「おう。いくらでも任せとけぇ~」   自分の胸をパーで叩いておどけて見せる、三島のその笑顔に、胸が熱くなる。  そうか。  周りにも無理していると映っているのか。  心配をされるほど。  いくら後悔して落ち込もうと、苦しもうと、サラの現実は何も変わらないのだから。  またあの笑顔が脳裏に浮かぶ。  白い花の中で微笑むサラ――。   感情を抑え込むように腕を組んで、天井を仰いだ。  ワインの瓶の底に沈む、澱みたいな心の奥底に沈殿したものを、全て吐き出してしまうように、もう一度ため息を吐いた。 
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