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ビルが立ち並ぶオフィス街のど真ん中にあるとは思えないような、特徴的な店構え。
まず目に飛び込んでくるのは、その印象だ。
店の扉の周りを囲む、古びたレンガ壁には、青々と茂るツタが絡み付いていて、「一見さん」には近寄りづらい雰囲気を漂わせている。
そして、ワイン樽に植えられた、私の背丈よりも少し高いオリーブの古木が、店の前にでんと鎮座して、シンボルツリーのような存在を果たしている。
年季の入った木製の扉に窓などはなく、店内の様子を外から窺い知ることはできない。
この時点で、かなりミステリアス。
扉の上に付いている、チョウチンアンコウの背びれの光る部分のような丸いライトが、ぼんやりと客を誘っている。
たぶん私も、まんまるの可愛い光に、まんまと誘引された一人なんだろう。
その淡い光が、木製の扉に掛かる「OPEN」の札を、優しく照らしていた。
一つ一つの要素が、私の好奇心をくすぐって、なんだか、素敵なことが起こるような予感がする。
少し息を整えて、真鍮製の取っ手を慎重に回すと、どこかが錆びているのか、大袈裟なギギギという金属音がした。
思い切って扉を強く引くと、その隙間から優しい風が身体を通り抜けていった。
――その瞬間、不思議な感覚に包まれる。
前にも訪れたことがあるような懐かしさと、誰かに招かれたような安心感がした。
その温かな雰囲気に、少しだけ緊張がほぐれ、いくらか胸を撫で下ろす。
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