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岸本さんの手元のウイスキーグラスが作る琥珀色の影が、とっても綺麗。
周りに時間が流れていないかのような静けさが流れていた。
「岸本さん。ウイスキーお好きなんですか」
「いや、普段は何でも飲むんだけど、この店で飲んだウイスキーがすごく美味しくて、気に入っちゃったんだよね」
自分のことを話す彼は、強い視線で私を射抜くように見つめてくるのに、私の話を聞いている時は、一転してその表情がとろけそうに甘く優しい顔になる。なぜだろう。
「サラちゃんって、お酒はいける方?」
「たぶん強くはないと思います。前回ワインを3杯飲んだら、足がフラフラして」
「ワインは案外度数が高いから。そうだなぁ。イタリアのお酒だったら、アマレットって知ってる?」
「⋯⋯いえ」
「じゃあ、試してみる? マスター。アマレットをお願いできますか。それのジンジャーエール割りで」
カウンターの少し離れたところにいたマスターが、「はい」と低い抑えた声で応える。
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