第3章 再会 (2回目)

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「ジンジャーエールで割るんですね。アマレットって、苦いんですか」 「苦くはないよ。アーモンドに似た香りがする杏のお酒だったはずだけど。それをジンジャーエールで割ると、もっと飲みやすくなるんだよね」 「アマレットって、イタリア語で『 苦い 』っていう意味だから、てっきり苦いのかと」 「へぇ。初めて知った」 「岸本さんこそ、お酒に詳しいんですね」 「詳しいってほどじゃないよ。でも色んなお酒を試してみるのは好きかもしれない。それぞれのお酒のバックグラウンドを知ってから飲むのが楽しいんだよね」  旅行中に偶然仲良くなった現地の人に貰った珍しいお酒の話や、東北の山奥で作られている日本酒を求めて直接買いに行った話などを熱っぽく話す彼の幅広い知識と、勉強熱心なところに感心していた。  今は、現地に行かなくても地図アプリで絶景を見ることができたり、真空パックに入った海外の料理をネットで注文して、電子レンジを指一本で操作するだけで、どんな国の料理でも自宅で食べることができてしまう。  画面上で出来ることが増えて、便利な世の中の恩恵を受けていることは幸せだと思っていた私は、なんて狭い世界で生きているのだろう。  彼の話に時々相槌を打ちながら過ごすひとときは、心に優しい灯りをともすような素敵な時間だった。
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