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「さっきのデートの話なんだけど、実は行きたい場所があるんだよね」
「行きたい場所⋯⋯」
「そう。少し恥ずかしいんだけど。サラちゃんと遊園地に一緒に行きたいんだ」
「えっ」
私の聞き間違いではないかと思った。
彼の雰囲気と「遊園地デート」という言葉が、思考の中でうまく重なり合わない。
もっと大人っぽいデートを勝手に想像してたからかもしれないけれど。
でも二人きりで遊園地だなんて――。
まるで映画のヒロインみたい。
でももしかしたら、「ローマの休日」のアン王女みたいに、夢のような時間が終わってしまわないだろうか。
素敵な岸本さんと野暮ったい私とじゃ、どう見たって釣り合うはずなんてない。
デートなんて言ってもまだ付き合っているわけじゃないし、友達同士が遊びに行くような感覚で誘ったのかもしれないし。
勝手に自惚れて期待して、勘違いだったなんて傷付くのは嫌だ。だから心にしっかりと予防線を張っておかなきゃ。
「遊園地、連れて行って下さい」
「良かった。じゃあさ、11月13日土曜の午前9時に、この店の前で待ち合わせよう」
「はい。その日なら平気です」
まだ二度しか会ったことのない男性とデートすることになってしまった。
相手が岸本さんだから嬉しいけれど、こんなに軽くデートの約束をしてしまったことにちょっぴり罪悪感もあるし、彼への好意を軽々しく扱うようで複雑な気持ちもあった。
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