第3章 再会 (2回目)

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 今日の会議はユニット曲の選曲と大まかなイメージまでを決めることになっていた。  何気なく伏見の方に目を向けると、視線がぶつかる。  「えっ、なに」  イヤフォンの片耳だけを外して訊いた。  伏見がこちらに話し掛けているのかと思ったからだ。  「いや、別に」 「あっ、そう」 「でも⋯⋯ここしばらく、そっちが悩んでる顔してるなぁって思ってはいたけど」 「あぁ」  それぞれが違う方向に顔を向けたまま、囁くような小さな声で話を続ける。 「なに。グループのこと?」 「いや。どちらかと言えば、俺自身のことかな」 「そう⋯⋯」  「最近、自分のことが分かんなくなってさ」 「うん⋯⋯」 「視野が狭いのかな。メンバーが頑張っているのは分かってるんだけど、だからこそ焦ったりしてて。忙しくさせてもらってても、本当にこれでいいのかなって」 「そう⋯⋯」  「あと、別件で考えてることもあって」 「⋯⋯そっか」 「そんな感じかな」 「まぁ、メンバーみんな同じ気持ちなんじゃん。不安になりながら、それでも必死に前に進む感覚っていうか。俺もそうだしさ」  
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