第3章 再会 (2回目)

15/15
前へ
/229ページ
次へ
 伏見と改まって話をすることは、正直言ってあまり多くはない。  だが嫌いだったり、仲が悪い訳でもない。  ただ他愛もない話をするような関係性ではないだけ。だがどちらかが八方塞がりになっているときは、なんとなくそれを察して、こうやって二人だけで話すことが今までも度々あった。  ピンチのときだからこそ、お互いの言葉が重要な意味を持つ。  対極の性格や気質を持っているから、それぞれが見えていないものが分かる。  だから適度な緊張感を持ってお互いを補い合う繋がり方が、俺たちにはちょうど良かった。  あいつの感覚を信じている。  もちろん、あいつ自身のことも。   確かに自分の感覚でしか物を見られなくなっていたのかもしれない。  グループを背負って戦っているのはメンバーみんな同じなのに。   「次の曲。これまでの物を越えるような曲にしよう」   伏見の短い言葉は、余計なことは考えず、一つ一つの物事に気持ちを込めて向かい合うのが俺たちのやり方だ、と言っているように聞こえた。  「⋯⋯だな」   自分に言い聞かせるように何度か頷く。  サラの運命も、一回一回を大切に何かを変える意識をすれば、その先に見えるものがあるかもしれない。  今はまだ、自分に何ができるのかすらも分からないけれど、彼女のためにできる限りのことをしたいという気持ちははっきりとしていた。
/229ページ

最初のコメントを投稿しよう!

111人が本棚に入れています
本棚に追加