第4章 祈り (3回目)

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第4章 祈り (3回目)

*** 《 2010年11月13日 》   いつものバー、「FUTURO PASSATO」の前で、ソワソワしながら辺りを見回していた。  岸本さんはまだ来てないか。  約束の時間より早く来ちゃったからな。  11月13日。土曜日。  8時半を少し過ぎたところ。  待ち合わせは9時だから、時間はOK。  やっぱり最後に迷ったスカートの方が良かったかな。  昨日の夜、「あれじゃない、これじゃない」と着る服を選んでいるうちに、クローゼットが空っぽになっても決まらず、途方に暮れてベッドに倒れ込んだら、不覚にもいつの間にか寝落ちしちゃってたし。  結局、山のように重なり合った服の中から、一番のお気に入りを着てきたけど。  その服は、1ヶ月前にショーウィンドウでマネキンが着ていたものを、そっくりそのまま買ってきたものだった。  ここ数年、流行りの服を買いに行くような時間や気持ちの余裕がなくて、買ったとしても大手ファストブランドの地味な無地の服ばかりだった。  そんな私に、同期の子が何気なく言った。 「サラもたまには可愛い服でも着て出掛けてみたら、心境が変わるかもよ。せっかく可愛くてスタイルもいいのに勿体ない」って。  勿体ない⋯⋯か。
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