第4章 祈り (3回目)

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 彼と一緒に居ると、今まで感じたことのない感情や感覚に出会える。  こんなに緊張しているのに、一方で居心地が良く感じることもそう。  初めて話をしたときから何となく感じていた、心穏やかになるこの感覚は一体どこから来ているのだろう。  そんなことを考えているうちに、また「好意」の色をした言葉が溢れていく。   運転している彼に向かって話すくらいの距離感がちょうどいい。  でも会話の途中に一瞬だけでもこちらに目を向けられると、反射的に逸らしてしまう。  この距離で見つめ合うのはさすがに無理。  ドライブデートもこれが初めて。  以前読んだ本に、ドライブに誘うのは「相手のことをもっと知りたい願望がある」と書かれていた。  岸本さんは、私のことをもっと知りたいと思ってくれているのかな。 「サラちゃん、緊張してる?」 「あっ、はい⋯⋯」 「だよね。実は、俺もなんだ」 「えっ、岸本さんも?」   そんな、まさか。  目線は前に向けたままで、彼の耳がだんだんと赤く染まっていく。
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