第4章 祈り (3回目)

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 ドキン。  これまでで一番の胸の高鳴りを覚える。  やだ。どうしよう――。  胸に溜まった熱いものが込み上げてくる。  もう理性だけでは止められない「好き」という衝動が、すぐそこまで迫ってくる音が聴こえた気がした。  彼の新たな一面がまた知れた。  でも嬉しい半面、少し怖い。  新しい彼を一つ知るたびに、好きだという気持ちが加速してしまう。  もうそろそろブレーキを踏まなければ止まれなくなるのを、直感的に感じていた。  ♪「愛してる」なんて言わなくていい その先の「さよなら」が聴こえてしまうから 眩しくて苦しい笑顔を向けなくてもいい わたしより似合う誰かに見せてあげてよ  ラジオから流れてくる曲。  女性歌手が歌うミディアムバラード。  今の私の気持ちにピッタリだった。  「苦しくて、切ない曲。愛しているのに別れなければならないのなら、いっそのこと、何も言わずに姿を消してくれたらいいのに。でもたぶん、その人のことを二度と忘れられないだろうな⋯⋯」  
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