第4章 祈り (3回目)

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*  フェアリーパークの入口ゲートをくぐり抜けると、大きなトンネルが姿を現す。  しばらく続くトンネル内の暗闇は、その先にある景色への期待感を、音楽の序奏のように最高潮に高める役目を果たしている。  そこを抜けると我慢していたものが一気に放たれるように青く広い空が見え、視界が鮮やかに開かれる。  鼻先をくすぐる潮の香りと、響き渡るジェットコースターの走行音とそこに乗車する人々の叫び声が、来園者の胸踊る気持ちをより一層駆り立てていた。   改めて見るとやっぱりすげぇなぁ。  園内に入る前から来園者の想像を掻き立てて、より期待値を上げるための緻密な工夫がそこかしこにされている。  だから何度来ても、嬉しい驚きが散りばめられているのだろう。  仕事をするようになってからは、エンターテインメントの視点で、施設やその見せ方、従業員の対応などに目が行ってしまう。  学ぶべきことがとても多い。  これが職業病ってやつだろうか。  普通の日常を特別な日に変える、魔法の力がこの「フェアリーパーク」にはある。  俺たちが作るライブも誰かにとっての「非日常の時間」になれるよう、より一層の知恵や工夫を凝らしていかなければ。
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