第4章 祈り (3回目)

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 仕事以外でここに来たのはいつ振りだろう。  俺の記憶が確かならば、高3の学校行事が最後だったはず。  そうなると10年以上経っているのか。  ふと隣のサラに目をやると、入口で渡された園内の案内パンフレットを、まるで子供のように夢中になって見ている。  ふふっ。  こんなところもサラらしい。  「あっ、すみません。夢中になっちゃって。フェアリーパークは久しぶりなんです。短大の頃は友達とよく遊びに来ていたんですが、仕事を始めてからは全くで」 「俺は個人的に来たのが10年振り」 「個人的にって、お仕事か何か」 「あっ、あぁ、そう。仕事関係でちょっと」   デビューが決まってからは、人が多く集まるような場所へはあえて行かないようにしていた。  遊園地だって行けば楽しいだろうけど、リスクと天秤に掛けてでも行きたいかと言われたら、そうではなかったから。  この10年間でバラエティや情報番組のロケで何回か訪れたことはあるけど、乗り物を楽しむと言うよりは、この場所の紹介が主な目的なので、全く遊びの気分ではなかった。
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