第4章 祈り (3回目)

12/34
前へ
/229ページ
次へ
 でももしも誰にも迷惑を掛けることなく、気兼ねもせずに済むとしたら、好きな女の子と手を繋いで遊園地に遊びに行ってみたい願望くらいはあった。  それが今回のデートの場所をフェアリーパークに決めた理由のうちの一つだった。  この時代だったら顔バレする可能性は低いし、最初で最後の遊園地デートをするとしたらその相手はサラ以外には考えられない。  「あの、岸本さんはどんなお仕事をされているんですか」   唐突にそう訊かれ、返事に詰まる。  いつかサラに訊かれるだろうと想定していたのに、返事を用意しておくのを忘れていた。  今ごろ後悔しても遅い。  まさか正直に言うわけにもいかないし――。 「サービス業、かな」   絞り出すように答えた。  まぁ、誰かに喜んでもらう仕事には違いないから、サービス業だと言えなくもない。  背中に変な汗が滴っていく。  俺の正体をサラに伝えるべきか迷っていた。  伝える必要性があるのかも分からないし、真実を伝えてサラを混乱させてしまうのなら言うべきではないはずだ。  だから思いつきで行動するのではなく、慎重に事を運ばなければならない。 
/229ページ

最初のコメントを投稿しよう!

111人が本棚に入れています
本棚に追加