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「あっ、フェアリーだ!」
少し離れた場所に人だかりが見える。
人々の隙間に、チラチラとピンクのものが見え隠れしている。
「フェアリー」とはフェアリーパークのメインマスコットキャラクターで、赤、水色、紫、橙、桃色、黄色、緑色の妖精。
たまたま俺たちのグループのメンバーカラーと同じ色だから記憶に残っている。
開園直後に大広場にキャラクターたちが一斉に出てきて、一緒に写真に撮ることができる。
だから人だかりができているようだ。
確かサラは桃色の妖精が好きだったんじゃなかったかな――。
「岸本さん、お願いします! フェアリーと一緒に写真撮ってもいいですか」
サラは訴えかけるような目で手を合わせた。
昔もよく使っていた常套手段。
そんな顔をされたら断われなくなる。
俺はこの目にめちゃめちゃ弱い。
「いいよ」
こういうところも全く変っていない。
無邪気というか、天真爛漫というか。
「本当ですか! じゃあ、早く列に並びましょ」
サラはステップを踏むような足取りで、人だかりの方へと向かって行った。
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