第4章 祈り (3回目)

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 俺の近くにいた高校生くらいの女の子たち4人組のグループが、俺の方をチラチラと見ながら何やらコソコソと話をしている。  何度も遭遇している光景だから、なんとなくその視線の雰囲気だけで分かる。  ヤバい。こちらの正体がバレたか。   ジャケットのポケットの中のサングラスを取り出して掛けると、さりげなく女の子たちに背を向けて俯く。  その動きはものの数秒だった。  もはや20年近く訓練してきた技と言えるかもしれない。危険察知能力と俊敏な動きは、仕事を始めてから身につけた技だ。  スマートフォンを見ている振りをしてしばらく様子を伺っていると、いつの間に女の子たちの姿は消えていた。  やはりこの時代も油断はできないか。  「岸本さん~。こっちです~!」  フェアリーと写真を撮る列に並んで大きく手を振るサラの声が、辺りに響き渡っている。  その声に振り返る人までいた。  また変な汗が背中を滴り落ちる。  念のためにサングラスを持ってきておいて良かった。色んな意味で。
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