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この世界は今も正確に動き続けている。
そこには寸分の狂いもなく、一瞬たりとも付け入る隙さえ与えてはくれない。
ただ「静かな」時間が淡々と流れるだけ。
だからこそ、この遊園地の人々の賑わいや、カラフルな色使いの乗り物が、時が流れる「動き」をより濃く感じさせた。
未来へ向かう時の一部としてこの世界にはサラが存在し、時を刻んでいるのに、俺の時はこの世界のものではないと拒まれるように、時を止めてしまっていた。
袖を捲って腕時計を覗いてみても、ここに来た時と同じ時間のまま針は動きを止めている。
それなのにどうしろって言うんだ。
でも、分かってる――。
俺とサラはどこまで行っても交わることのない「平行線上」に存在していることも。
どんなに願ったとしても、それはきっと変わらない事実。その上で何ができるのかを考えなければならない。
何の収穫もないまま、サラとの幸せな時間が飛ぶように過ぎて行った。
さっきまで雲一つなかった空の遠くから、だんだんと茜色の気配が迫ってきている。
別れの時がすぐそばまで迫っていることを知らせるように。
海から上がってくる風も、冬の訪れを感じさせるほど、ひんやりと冷たさを増していた。
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