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水面に浮かぶ小舟に乗り込むと、さっきまではしゃいでいたサラの言葉が途切れた。
そして何かを思うように黙って空を見上げている。
サラの横顔越しの空は、橙色と金色が溶け合った色に染まる。
その光を落とす水面の揺らぎは、見惚れてしまうほどに美しかった。
「平行線上」にいるサラと、こうして同じ空を見上げていることは奇跡なんだ。
いや。それを言うなら、サラと同じ時代に生まれて同じ時を過ごし、彼女を好きになる確率の方がさらに奇跡に近い。
いくつもの奇跡が重なって俺たちの運命が導かれているのなら、なぜこんな形の困難を与えるのだろうか。
みるみるうちに色を濃くして行く夕陽は、まるで「最後まで諦めずに命を燃やせ」と、俺たちに強く訴えかけているように感じられた。
誰かからのメッセージのように。
俺にしかできないことをやらなければ。
サラの運命は――。
胸騒ぎがこれまでよりも大きくうねり出し、居ても立っても居られなくなった。
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