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小舟に乗っていたときよりもさらに暗闇が広がり、今日が終わる物悲しい空気を感じ始めたころ、夜空に色とりどりの花火が上がった。
天高くまで上がり、大きな音をさせて火花が頭上に花開く。
音楽に合わせた眩い光が、次々と破裂音をさせながら開いていった。
鮮やかに瞬いて火花を散らし、たちまち暗闇に儚く消えていく。
辺りに火薬の匂いだけを残して――。
美しく、物寂しいその花たちを、二人で見つめていた。
水路に等間隔に並ぶ温かみのある色をしたアンティークな街灯が、レンガ道や周りの建物を穏やかに照らしている。
街灯の明かりと花火のコントラストは、そこにいる全ての人々の心を奪っていた。
「キレイ⋯⋯」
サラがため息を漏らすように呟く。
無防備なサラの指先にそっと触れると、一瞬ビクッと震え、動きを止めた。
その隙に手を滑り込ませ、指を絡める。
柔らかくて小さいサラの手は、夜風に吹かれて冷え切っていた。
その手を温めるようにしっかり握ると、サラもギュッと握り返してくれる。
俺たちはちゃんと繋がっているんだ。
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