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視線は次々と上がる花火を追っているのに、全ての意識は繋いだ手に向けられていた。
俺の体温が徐々にサラの手に移り、二人の温度が混ざり合う。
愛しい温もりを感じながら、ここにいる実感を強く噛み締めていた。
「初めて会ったときからずっと好きだった」
花火の大きな音にかき消されないように、サラの耳元で囁く。
その横顔から表情の変化は読み取れない。
本の隙間にしおりを挟むような、一瞬の沈黙に包まれる。
サラは目線を少し落とし、返事をするように繋いだ手を強く握り返した。
それから、俯いたまま無言で小さくコクンと頷く。
この小さな手を二度と離したくない。
もう絶対に。
あの日、この手を離してはいけなかった。
自分に自信が持てなくて臆病だったばかりに、逃げ出すことしか考えられなかった。
もう同じことを決して繰り返さない。
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