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車に乗り込んですぐに暖房をつけた。
11月の海風は想像以上に冷たい。
体温の高い俺でさえ身体が冷え切ってしまったのだから、サラは芯まで凍えているのではないかと心配になった。
助手席にチラッと目を向ける。
フェアリーパークを出て、駐車場までの道のりも、ずっとサラは無言のままだった。
「次は海でも見に行かない」
車内の空気を柔らかくさせようと、サラに明るく声を掛ける。
工業地帯を照らす幻想的な夜景が、車の窓の外をスピードを上げて過ぎ去ってゆく。
サラはその景色に目をやることもなく、俯き加減に口を結んでいた。
園内で小舟に乗ったくらいから言葉数が少なくなっていって、俺が好きだと伝えるとさらに表情が曇っていった。
それに頷いて返事をしてくれたけど、まだ戸惑いと迷いがあるのかもしれない。
「はい⋯⋯」
「海は好きじゃないかな。なら、他の場所にしようか」
「あっ、いえ、連れていってください。特に冬の海って好きなんです」
「そう? じゃあ、決まり。来月の12月8日って空いてるかな」
「ちょっと待ってください。確認します。えっと、その日の午後なら平気です」
「じゃあ、午後にしようか。14時に今日みたいにFUTURO PASSATOのバーの前で」
「⋯⋯はい」
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