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完全にサラの心は上の空。
彼女の胸の中にある不安は、何に対するものなんだろう。
俺への気持ちか。
それともこの状況にだろうか。
サラにキスをしたのは、遊園地の雰囲気に後押しされたのもあっただろうが、何の変化もなく今日一日が終わってしまうことへの焦りの気持ちも大きい。
少し強引すぎたかもしれない。
いきなりキスをしたら戸惑うのも当たり前。
「たくさん歩いたからさすがに疲れたよね」
「⋯⋯はい」
「花火もすごく綺麗だったし。俺、あんな近くで花火見るの久しぶりでさ」
「⋯⋯はい」
「サラちゃん、俺のことどう思ってる」
「はい⋯⋯いや、ええっと」
サラはしどろもどろに口ごもる。
心がどこか遠くへ行っていたようだ。
「なんか、ごめんね」
「違うんです。私の方こそ、すみません。まだうまく心の整理ができなくて。岸本さんの気持ちが自分に向けられたものだって実感が湧かないんです。それに岸本さんには好きな人がいると思っていたので、どうして私なんだろうって考えたり⋯⋯」
そんな風に思わせていたんだ。
俺は君のことばかり考えてるのに。
「サラちゃんのこと本気だよ。他の人じゃ代わりがきかないんだ」
そう。彼女じゃなきゃダメなんだ。
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