第4章 祈り (3回目)

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 小2のある日の昼休み。  今でもよく覚えている。  まだ梅雨明け前なのにカラッと晴れて夏みたいな日差しが照り付ける日の午後。  俺はいつものように、クラスの友達と校庭でサッカーボールを追い掛けていた。  少し走るだけで大量の汗が滴り落ちてTシャツがビショビショになったが、そんなことは気にもせず校庭を駆け回っていた。  ふと目をやった先にサラの姿を見つける。  校庭脇のベンチで、一人本を読んでいる。  休み時間にはいつも教室か図書室にいるはずのサラが校庭にいることが珍しくて、チラチラと横目で見ていた。  だがなぜか次に目を向けたとき、同じクラスの数人の男子がサラの周りを囲んでいた。  しかも俺のいた少し離れた場所からも、サラの嫌がる表情がはっきりと見える。  ――サラがいじめられているのか。  そのときタイミング良く、他の奴から俺の足元にボールが回ってきたんだ。  その場所から狙ってシュートすれば、簡単にゴールができる位置。だから同じチームの奴らは、俺がゴールを決めると誰もが思っていただろう。
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