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だがその予想を俺はあっさり裏切った。
その場所から少し後ろに下がって勢いをつけると、砂まみれのサッカーボールをサラを囲んでいる奴らに向けて思いっきり蹴った。
ボールは青空に綺麗なアーチを描く。
そして集団の中にいた奴の後頭部に勢い良くボールが直撃した。
ボコッと命中した音が聴こえるくらいに。
よっしゃ! 俺って天才~!!
――悪ぃ、悪ぃ。足元が狂ったぜ~。
頭をわざとらしく掻きながら、痛そうに頭を抱えている奴の元に駆け寄る。
そいつの手には、サラが大切にしている本が握られていた。
――和也、痛ってぇな~!
――特大ホームランだせ。
――それは野球だろ!
――だな。なんだよそれ。手に持ってるやつ。
――あぁ、これか。こいつ、いつも本ばっか読んでるから、取り上げてやったんだよ。
――お前は読めないだろ。本なんて。その本、俺に貸してくれよ。
――いいよ。こんなのいらないし。じゃあ、行くか。
アイツらは素直にサラの本を俺に渡すと、校舎の影へゾロゾロと消えて行った。
ベンチに座ったまま俯くサラは、そこで静かに泣いていた。
ポツポツと膝に落ちる涙が、サラのスカートを水玉に染めている。
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