第4章 祈り (3回目)

28/34
前へ
/229ページ
次へ
 だがその予想を俺はあっさり裏切った。  その場所から少し後ろに下がって勢いをつけると、砂まみれのサッカーボールをサラを囲んでいる奴らに向けて思いっきり蹴った。  ボールは青空に綺麗なアーチを描く。  そして集団の中にいた奴の後頭部に勢い良くボールが直撃した。  ボコッと命中した音が聴こえるくらいに。  よっしゃ! 俺って天才~!!  ――悪ぃ、悪ぃ。足元が狂ったぜ~。   頭をわざとらしく掻きながら、痛そうに頭を抱えている奴の元に駆け寄る。  そいつの手には、サラが大切にしている本が握られていた。  ――和也、痛ってぇな~! ――特大ホームランだせ。 ――それは野球だろ! ――だな。なんだよそれ。手に持ってるやつ。 ――あぁ、これか。こいつ、いつも本ばっか読んでるから、取り上げてやったんだよ。 ――お前は読めないだろ。本なんて。その本、俺に貸してくれよ。 ――いいよ。こんなのいらないし。じゃあ、行くか。   アイツらは素直にサラの本を俺に渡すと、校舎の影へゾロゾロと消えて行った。  ベンチに座ったまま俯くサラは、そこで静かに泣いていた。  ポツポツと膝に落ちる涙が、サラのスカートを水玉に染めている。 
/229ページ

最初のコメントを投稿しよう!

111人が本棚に入れています
本棚に追加