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泣いているサラの隣に本を置く。
それに気付いた彼女が、少し顔を上げた。
――はい、これ。大事な本なんだよね。
――うん。⋯⋯ありがとう。
――アイツら、いつもこんなことしてくるの。
――たまにされる⋯⋯。
――そんじゃあさ、またいじわるされるようなことがあったら、今度は俺に言えよ。サラのこと守るから。俺、約束するよ。
もちろん俺は本気だった。
サラを守りたかった。
彼女を悲しませる奴が許せなかった。
だが初めはあまり深く考えもせずに「守る」だなんて口にしたんだと思う。
サラに良く思われたい一心で。
それまで気を引こうと話し掛けてみても、一言二言、言葉を交わすだけで、会話が長く続くことはなかった。
サラの心の扉は固く閉ざされていた。
だがどうしてか、クラスメイトの和田や川崎と一緒のときは、良く喋っているのを見掛けるし、別人のように明るく振舞っている。
だから俺は嫌われているんだと思っていた。
だがその予想も間違っていた。
サラは極度の人見知りだったんだ。
仲の良い友達なら平気で話せるのに、知らない奴とは会話が弾まない。
素っ気ないのは俺に対してだけじゃなかったんだと知った。だからこそ、サラと仲良くなるきっかけを探していた。
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