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その日の下校時間。
下駄箱で靴を履き替えていると、近くにいたサラに声を掛けられた。
それはとても小さく囁くような声だったから、「えっ、なに」と大きな声で聞き返してしまった。
俺の声の大きさに驚いた顔を見せる。
それから恥ずかしそうに顔を赤らめた。
――帰ってもいいかな⋯⋯。
――えっ?
――和也くんと一緒に帰ってもいい?
――えっ、うん。帰ろう、帰ろう! じゃあ、行こっか。
サラからの突然の誘いに、俺は心の中でガッツポーズを取っていた。
だがニヤニヤしてたら嫌がられてしまう。
だからその気持ちをグッと堪えて、サラの頭を優しくポンポンと撫でた。
――誘ってくれて、ありがとうな。
サラが俺を頼ってくれたことが、嬉しくてたまらなかった。
その日から、毎日サラと一緒に帰った。
学年が上がってもずっと。
帰り道には、その日の学校での出来事や、昨日のテレビの話なんかをした。
ケラケラと声を上げながら笑うサラを見掛けた周りの奴らは、みんな驚いていた。
いつもはおとなしいサラが、大声で笑わないと思っていたからだろう。
サラをいじめていた奴らも、彼女のことが好きだったのかもしれない。
サラと話すきっかけが欲しかっただけで。
俺たちが一緒に帰るようになってからは、サラをいじめる奴はもうどこにもいなくなっていた――。
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