第4章 祈り (3回目)

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 その日の下校時間。  下駄箱で靴を履き替えていると、近くにいたサラに声を掛けられた。  それはとても小さく囁くような声だったから、「えっ、なに」と大きな声で聞き返してしまった。  俺の声の大きさに驚いた顔を見せる。  それから恥ずかしそうに顔を赤らめた。 ――帰ってもいいかな⋯⋯。 ――えっ? ――和也くんと一緒に帰ってもいい? ――えっ、うん。帰ろう、帰ろう! じゃあ、行こっか。  サラからの突然の誘いに、俺は心の中でガッツポーズを取っていた。  だがニヤニヤしてたら嫌がられてしまう。  だからその気持ちをグッと堪えて、サラの頭を優しくポンポンと撫でた。 ――誘ってくれて、ありがとうな。  サラが俺を頼ってくれたことが、嬉しくてたまらなかった。  その日から、毎日サラと一緒に帰った。  学年が上がってもずっと。  帰り道には、その日の学校での出来事や、昨日のテレビの話なんかをした。  ケラケラと声を上げながら笑うサラを見掛けた周りの奴らは、みんな驚いていた。  いつもはおとなしいサラが、大声で笑わないと思っていたからだろう。  サラをいじめていた奴らも、彼女のことが好きだったのかもしれない。  サラと話すきっかけが欲しかっただけで。  俺たちが一緒に帰るようになってからは、サラをいじめる奴はもうどこにもいなくなっていた――。  
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