第4章 祈り (3回目)

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*** 《 2020年11月14日 》   俺たちのグループ「RainbowStar」のレギュラーラジオ番組の収録日。  スケジュールの関係もあって、メンバーの中から2,3人ずつ収録することも多い。  収録が終わってスタジオから控え室へ戻る途中で、後ろから名前を呼ばれる。  「和也。今日ってこれで終わり?」   声を掛けてきたのは新見(にいみ)だった。  「このあと、別の収録が入ってるけど」 「そっか。いや、何もなかったら、たまには帰りに一杯なんてどうかなと思ってさ。個人的に話したいこともあったし。そんじゃ、またにするわ」 「どうした。何系の話? 新見が飲みに誘ってくるなんて珍しい」 「ほら、ここんとこ、和也が浮かない顔してんなって思ってたから。大丈夫か。なんか溜め込んでんじゃないの」 「あぁ、多少ね。まぁ、俺の頑張り次第で解決することでもないからさ」 「そっか。じゃあ、また近々ゆっくりと」 「あぁ」   新見と仙堂(せんどう)は1歳違いでグループの中でも若い方だから弟扱いされることも昔は多かったが、最近はライブの仕切りも安心して任せられるようになってきた。  だがいまだに、兄貴や親目線で見る癖が抜けきれない。
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