第5章 江ノ島 (4回目)

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第5章 江ノ島 (4回目)

*** 《 2010年12月8日 》   やだなぁ。  だいぶ曇ってきちゃった。  あんま早い時間に雨が振り出さなければいいけど。でもこの雲の感じだと、時間の問題かもしれない。   車の助手席から見える空は、徐々に遠くの方から灰色の厚い雲が広がっていて、窓ガラスに自分の冴えない顔が映るくらいに夕闇が濃く迫ってきている。  昨日見た天気予報では、2週間ぶりに雨になると言っていた。  最近晴れ続きだったのに、今日に限って雨だなんて。どちらかと言えば晴れ女なのに。  隣でハンドルを握る岸本さんは、この間よりもお喋りな気がする。  なるべく会話が途切れないように気にしているみたいに。口数の少ない私のことを気にしているのかな。  実は今日ここに来るかどうか、ギリギリまで迷っていた。  彼に惹かれ始めている自分を感じるけれど、心の中の何かが好きになる気持ちにストッパーをかけている。  本能と理性を天秤に掛けたなら、今はたぶん理性の方が勝っている。  そんな気持ちのままここに来てしまって良かったのかと、助手席に座った今もまだ心は迷い続けていた。  彼はこの間よりも痩せたように見える。  少し頬もこけて、横から見た顎の輪郭がハッキリとしている。 ――何かあったのかな。 
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