第5章 江ノ島 (4回目)

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 彼の運転する車に乗るのは、これで2度目。  でも前回の車とは形が全く違った。  またあの固いバックルをはめるのかと、朝から心臓がバクバクと波打っていたけど、そんな心配は要らなかったみたい。  これって、4WDって言うのかな。  タイヤが大きくて、車高が高くて。    私も大学一年の時に一応免許は取ったけれど、山手線の内側に自宅があったから、公共交通機関を使えば移動には困らなかったし、仕事に就いてからも電車通勤だったから、立派なペーパードライバーのいっちょ上がり。  それに車も詳しくないから、「4WD」と「2WD」の違いを説明しろと言われても、正直困ってしまうくらい。   フェアリーパークの帰りに、岸本さんから次のデートを誘ってもらった。  でもあのとき、今ここから見える空に掛かった分厚い暗雲のような不安が心に押し寄せて、急に苦しくなってしまった。  彼とキス、したんだよね。  下唇を軽く噛む。  好きになってもいいのかな。  あれから何度も自分の心に問いかけている。 「好きだ」と言ってくれた岸本さんの言葉だけを信じればいいはずなのに、迷った心が行き場を失くしてフラフラと彷徨っている。  最初はそばに居られるだけで嬉しかったのに、今は胸騒ぎが収まらないのはなぜ。  それに会っていないときよりも、岸本さんとの心の距離を感じていた。 
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