第5章 江ノ島 (4回目)

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「江ノ島水族館、懐かしい。学校の遠足で来たことがあったの」 「俺もあるよ。小学校のときに」 「えっ、岸本さ⋯⋯いや、カズヤも。遠足で来る学校って多いのかな。でもあの頃とは雰囲気も少し違うし、名前も変わったみたいだけど⋯⋯」 「俺もこの前知ったんだけど、2000年に入ってからリニューアルしたらしいよ」 「あぁ、だから」 「実は、今日ここに来たのは、サラに見せたい場所があったからなんだよね」 「見せたい場所?」 「そう。驚くと思うよ。じゃ、行こう」   ニコニコと心から嬉しそうに私の顔を見ながらカズヤは私の手を取り、指を絡ませた。  それは躊躇する暇もないくらいにスムーズだった。  その仕草は妙に大袈裟でもなくて、当然のような振る舞いをしてくれたからか、あまり恥ずかしさを感じなかった。   飾りっけのない彼の手はいつも陽だまりにいるみたいに温かくて、その手に包み込まれると心を預けているような安心感がある。 
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