いつものバス通学

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「り~な~っ」 「ん?(あの声は…)」 自分を呼ぶ声がする方を向くと里奈の母の姿が見える。 「お母さん…っ」 呟いて駆け寄ると、息も絶え絶えの母の手にはお気に入りのバンダナで包まれたお弁当があった。 「ごめ……渡すの、はあ……忘れ………はあはあ……」 「ありがとう! お母さん」 「うん。はあ……はあ……」 肩を大きく上下させて、呼吸を整えながら母は気をつけて行くのよ。ついでだから見送るわ、と一緒にバス停でバスを待った。 ほどなく姿を現したバスに乗り、里奈は乗車すると外からいってらっしゃいと手を振る母に笑顔で答えた。 母が見えなくなると、分かりやすく落胆する。 例の人に会えなかったからだ。 (残念……) 今日1日ブルーな気分だわ、としょげた顔で登校した里奈だった。
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