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昼休みが終わり午後の授業が始まると室内には科目教師の声と板書の音、生徒たちがノートを取るコツコツ、カリカリという音しか響かない。
食後に、生徒の集まりでほどよい室温になってる教室、教師の声は子守唄にしかならない。
襲いくる睡魔に抗いながらノートを取っていたが、里奈も数名の生徒も限界が来ているようだ。
(むぅ……眠い……)
徐々に視界が狭まっていくのを止められず、ゆっくりと机に突っ伏していく里奈の耳に、静かに引き戸が開く音が届いた。
(ん……?)
教室の後ろの引き戸から2人の人物が入ってきた。
1人は里奈のクラスの担任の菊池、もう1人は……。
(あっ! さっきの不審者の人!?)
思わず音を立てて立ち上がってしまった里奈にクラス全体が注目した。
「どうしました? 谷川さん」
授業中の教師から指摘され、いえ……と口ごもりながら椅子に座り直したが里奈の視線は教室の後ろにいる担任の横に釘付けだった。
「はい。みなさんこちらには構わず、しっかり授業を受けてください」
菊池が制すと、生徒たちは科目教師の方を向いた。
空気が好奇心でざわついているのが肌に伝わってくるが、今はグッと我慢の子。
授業終了を告げるチャイムを2-Aが一丸となって待っていたのは間違いなかった。
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