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翌朝、案の定母の声に起こされた里奈はまたあわてふためいて学校にいく準備をする。
「おかーさんっ! パンだけでいい!」
「ダメ。ちゃんと飲み物も飲んでいきなさい。体も頭も起きないわよ」
「もう~~~っ」
牛のように唸りながらパンをかじり、牛乳を飲み、ごちそうさま! と食卓を後にすると急いで身支度を整えて家を飛び出たのだ。
「車に気を付けるのよ~」
「いってきまーす!!!」
母の声など耳に入っているわけもなく、腕時計で時間を確認するとあと7分ほどで乗るバスが来る。
停留所まで全力疾走を余儀なくされた。
「…い…き…が…はぁ…くるし………」
苦しいのをわかっていてさらに声に出すのは自殺行為ではないだろうか、という思いが頭に浮かんだがすぐに酸素不足で打ち消される。
見慣れたバスのシルエットが首だけ振り向いた視界に入ると一層速度をあげた。
プシューっとエアが抜ける音がして、バスの折戸が開くと前方に並んでいる数名が次々に乗り込む。
まだ、里奈の足はバスまで届かない。
息が切れる。
荷物が重い。
間に合わない…!
「ま…まって………ぇ」
ヘロヘロになりながら必死に声を出し、手を伸ばすと、里奈の手がふいに冷たいものに包まれた。
「がんばれっ」
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