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「今日のボイスは誰なのかな~」
時間は夜11時半を回ったところだ。
里奈は自室でクッションを抱えてラジオをつけて心待にしていた。
AMではなくFM放送なのがまたツボで、落ち着きのある放送が流れる今ぐらいの時間がとても好きな彼女は、宿題を終えるとベッドに腰を下ろして待ちわびるのだ。
流れるジャズサウンドを聞きながら、抱えたクッションに顎を乗せているとじわじわと眠気が襲ってくる。
(今日は朝から全力疾走したし…地味に眠いな…)
「ダメ!ダメダメ! 今日のletter聞いてから寝るの!」
パチンと自分の頬を打ち、必死に眠気を飛ばそうとする里奈の耳にいつもの5分間の開始を知らせる短い効果音が届いた。
「あ、始まる」
ギンっと目を見開いて耳を済ます。
『今はたくさんの友達に囲まれているきみだけど、本当のきみを見てくれている人はいますか? ときどき一人で俯いている姿を見かけると心配になります。自分の心を押し殺すしかできなかったあの頃のきみが重なって…』
リスナーから送られてくる手紙を読むだけの番組なので終始の挨拶がなく、読み上げる人物の紹介もない。
いくら声に惚れようとも検討がつかず、ラジオ局に問い合わせるくらいしか手立てがなかった。
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