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(今日は聞いたことない人の声だぁ)
聞き入る里奈は初めて聞く声だなと思ったが、読み上げる手紙の「よかったね」のフレーズにあれ?っと首を傾げた。
脳をフル回転させて、聞いたことない声の聞いたことある既視感を思い出していた。
「あ…」
そうだ。
今朝、バス停で引き上げてくれた人の声に似てる気がするのだ。
テノールとアルトの中間あたりの音域のハスキーボイス。
男性とも女性とも判別できなさそうな声だった。
耳には自信がある里奈は、声フェチで一度聞いた声を間違えないと、今のところ自他共に定評があるくらいだ。
「そう…そうだよ。あの人の声だ」
うっとりと耳が幸せに浸っている間に時間は過ぎて、最後の一言が流れる。
『おやすみなさい…よい夢を…』
心地よいBGMが数秒だけ大きくなったあと、聞きなれた日付が変更する時報が0時を知らせた。
「あ~…今日ももう終わっちゃった…」
(毎日あるのは嬉しいんだけど、5分は短いなぁ…)
ふと思い付くのは、5分以上の内容の手紙が来たときはやっぱり省略するのだろうか、ということ。
思いの丈を詰め込んだ手紙だから長くなってもおかしくはない。
今まで途切れることなく上手いこと5分で収まっているから長いものは読まれないのかもしれないな、と一人で納得した里奈はモソモソとベッドに潜り込んだ。
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