いつものバス通学

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いつものバス通学

スマホのアラームが小鳥のさえずりを鳴らした。 枕脇に置いていたスマホを手に取り、スライドさせてアラームを切った里奈は珍しくスッキリと目覚めている。 (今日、バスに乗るかな……?) 昨日の朝を思い出しながら、今日はゆとりを持って登校しようと頑張って起きたようだ。 いつもの通学路のバス。 今まで気づかなかった彼の人の存在は、一日でその存在を認識し、声を覚え、なんとなくまた会いたい人になっていた。 (ラジオとおんなじ人なら……なんか得した気分かも?) 耳が幸福になった好みの声の持ち主。 今日会えたなら、昨日のお礼をしっかりとして知り合いになれたら……。 そしたらもっと耳が幸せになると思う里奈だ。 (うん! きっとなる!!) ベッドから元気に降り立つと、身支度を整えて階下に降りる。 母が驚いて声を失う。 里奈は気にせずおはよう、と声をかけると冷蔵庫から牛乳を取り出してコップに注いだ。 「お……おはよう…」 「お母さん、卵焦げ臭いよ?」 「え? あぁー!!」 里奈からフライパンに視線を戻した母は、急いでフライパンを火から下ろしてコンロを消した。 「それ、私が食べるからお父さんには新しいの焼いてあげて」 言いながらお皿を出して目玉焼きを受け取った里奈はコップとお皿をテーブルに置くと真ん中のバスケットに入れてある食パンを1枚取って食べ始める。 「う…ん。ありがとう…」 母の顔から驚きの表情は消えない。 急な娘の成長は一体何を意味しているのか……。
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