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いつもなら疾走するバス停までの道のりを、今日は見回す余裕がある。
「へぇ~あのお家の出窓、ぬいぐるみ飾ってあってかわいー」
白い洋風の家の出窓が目に入り、思わず声に出して感嘆の声をもらす里奈はキョロキョロと興味を惹かれるものに目移りしている。
「のんびり歩けるっていいな~」
今まで損していたような気分にさえなった。
(明日も歩いて行けるように頑張って起きよう~っと)
彼の人に会えたら、との目的のために早起きをすると、すっとばしていた景色がとても素敵な道のりにみえて得した感を得られたことに気づく。
見慣れたバス停が彼女の視界に入ってきた。
何人かの乗客が並んで待っている。
毎日見てる人たちなんだろうけど、いつもギリギリの里奈には見覚えがない。
高校に入学してからずっと同じバスに乗っている人もいるかもしれないのに、見覚えがない。
近づいていく列の中に…今朝はいない気がする。
はっきりと覚えてるわけではないが自分より身長は高かったはずだと彼女は記憶していた。
(はぁ~残念だなぁ…)
列の最後尾に並び、ポケットからスマホを取り出した。
時計を見るとあと8分ほどでバスが来る。
スマホの画面を消してポケットに戻すと聞きなれた声が聞こえてきた。
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