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彼女に話しかけられた。
ある日、
彼女に図書室で話しかけられた。
彼女は、
学年1の成績で有名だ。
彼女が有名なのは頭がいいからだけではない。
美少女なのである。
ただし無口でミステリアスということも公然である。
俺は任務遂行に来たとはいえ、この時代の人間に紛れて学校生活を送っているわけだから友達は何人かいる。彼女のことはそいつらから聞いていた。
その時、俺はかなり焦っていて図書室で必死に勉強していたのだ。
そう、彼女に話しかけられた。
「あんた、未来からこの時代の教育を学びに来たと思っているんでしょ。未来の学校で表彰されたのよね?
それで代表して過去に来たんでしょう、タイムマシンにでも乗って。」
「え…あの、何を…」
「あなたの家族は未来が用意してくれた人間だと信じているのよね?
そして義務教育が終わったら未来に帰れるんでしょう?そうよね、そうなっているはずだわ。」
彼女は初対面の俺に躊躇なくズバズバと言葉をぶつけてきた。何を言っているんだ…。
「急にどうしたの?俺ら初対面だよな…」
「ええ、初めましてよ。でも、あなたが騙されていることは知っているわ。」
俺は冷や汗をかいた。
この子はどういうつもりなんだ。
手に持っていたシャーペンをことりと机に置く。
もう一度彼女の言葉を頭の中で復唱した。
彼女が言った言葉は俺の記憶と一致していたのだ。
そう、彼女が言うことは全て正しかった。
何一つ間違えがなかった。
さっきまで止まらず覆い被すように話していた彼女はもう黙ってこちらをじっと見つめていた。
ただ静かに、俺の言葉を待っているみたいに。
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